青海老まんが日記(漫画の感想文垂れ流し)

主に完結漫画の感想を語ります。たまにただ語ります


 主に完結した漫画の感想を書く。多分漫画の感想にかこつけたぶちまけになっていると思う。基本的に漫画を読んで「xx 感想」と調べるタイプの人を読者として想定している。要は読んだ人向け。

 タバタ式から辿ってきた方は、恐れ入りますがグローバルナビゲーションのロードバイクの部分から飛んでください。最近練習サボリ気味

拾ったチェーンの開け方。おいしいコーヒーの入れ方。


 漫画も人もいい所だけを見つめよう

 「みんな試合出たからね!」と言われたことがある。無論私は出ていない。当時も豆腐のようなメンタルを誇っていた私であるが、何故か笑ってしまった。みんなとは何か。みんな持ってるから。「みんな64持ってるから私にも買ってよ」「よそはよそ、うちはうちでしょ」「うちとはなにか。そんなにうちは特別なのか。それはみんなという定義からしておかしいのではないか」「みんなって言ったのあなたじゃない」「あ、そうか」ん?

 大学生の頃だ。体育会系の部活動に所属する人間としてあるまじき運動神経を誇っていた私は、二回生の半ばになっても両手の指に余る程度しか試合に出た経験がなかった。

 一瞬で小さな嘘を撤回したい。両手の指と言ったのは自分を守るための嘘であり、正確には二試合しか出場していない。出場2イニングでエラー3つ重ねた試合と、代走で牽制死した試合。野球をご存知ない方にたとえ話で説明すると、合コンに行って自己紹介の間に3回相手の名前を呼び間違え、そのあと注がれてもいない酒を飲み過ぎて勝手に寝始めるのと同じくらいの失態だと思ってくれればいい。要はゼロの人間だ。

 六月頃だったと思う。梅雨の合間、予想外に晴れ間が来てしまったのを覚えている。「また晴れたな……」とげんなりしながら私はグラウンドに向かった。なぜげんなりしていたかと言えば、雨が降れば部活動は休みになるからである。部活動が休みになったなら、自分の好きなことが出来る。だから部活があると憂鬱だった。

 巷でよく言われる「雨が降ると大喜びするなら部活なんてやめてしまえばいい」というのは全く違う議論である。何も球拾いやビデオ撮影、グラウンド整備をするために部活に所属するつもりはなかった。ただ、実際に入ってみると思いのほか楽しくないと言う状況が続いているだけだ。もう少しすれば楽しくなると出所を信じて毎日拘置所から星を見上げていた人間に「何故辞めないのか」という文言はあまりに酷ではないだろうか。これは例えが良くなかった。拘置所との決定的な違いは「自発的に辞められる」ことだ。じゃあ辞めればよかったのか? よかったのだ。なんと。誰か言ってよ。

 閑話休題。その日も試合に出る気配がなかったので、一試合目は我先にとビデオ係に名乗りを上げた。私がビデオ係を好んでいた理由はいくつかあるが、別のことをしながら仕事が出来るというのがポイントだ。

 その頃のマイブームは「ダイヤル式ロックの開錠」だった。さもしい人間のナイスな趣味だ。一応説明しておくと、学内にまれに落ちているダイヤル式の鍵(自転車によくついているアレである。3~4桁のものが多い)を拾ってきて、それを開錠するという遊びである。この作業の魅力は、「努力が必ず結実する」というところだ。コツも技術もいらない。ただ0000から9999まで一つ一つダイヤルをかちりかちりと回していくだけで、いつか努力が花開く。鍵も開く。そういうところに私は魅力を感じていた。別に狂っていたワケではない。そういう単調な作業が好きなだけである。もしかするとちょっと狂っていたのかもしれない。

 それはさておき。ビデオ撮影をしながらだらだらと錠を回し続ける。手つきも慣れたもので、おおよそ40分程度で1,000コマ回すことが出来る。「回すだけならもう少し速くできるのでは?」と思った方。甘い。甘すぎる。「回して、引っ張る」までで一つの動作なのだ。我々の目的はコマを回すことではなく、開錠することだ。0001に合わせる。引っ張る。0002に合わせる。引っ張る。0003に合わせる。引っ張る。これを延々繰り返す。ちなみに、学内に落ちている鍵は若干サビていることもあるため、鍵同士のかみ合わせを良くしてやらなければ外れない場合もあり、引っ張る動作の後にチェーンを両側から揺すってみるという動作も実は加える必要がある。だが、これは無意識のうちに習得できる動作なので気にしなくてもよい。もっと言うと、別に甘くもない。世の中には知らなくて良い技術や知識があり、その最右翼が「拾ったチェーンの開け方」だ。そんなものを習得する暇があるなら「おいしいコーヒーの入れ方」でも勉強した方がいい。

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 一試合目が終わる。おおよそ一試合で2時間、休憩を挟みつつ3,000コマを回した私は達成感に満ち溢れている。さて、もう一試合はベンチで試合観戦といくかなんて考えていた。練習試合の場合、一試合目は主力選手が出場し、二試合目はそうではない選手が出場する場合が多い。そのため、二試合目のベンチはとりえあずへちょい選手もベンチに入っておくというわけだ。ちなみにこの場合、ビデオ係は一試合目の先発投手などが実施することが多い。もう出番ないからね。

 というわけで、なまりきった体にムチを打ってベンチに入り込む。監督やコーチに向かって「準備万端でっせ!」という顔を見せつける。素振りなんかもブンブンしちゃう。でも彼らの眼差しが私を捉えることはないの。それでも何も言えなくて……夏。梅雨か。どっちでもいいけど。

 特に興味も無い試合が目の前で流れていく。一応言っておくと、無論試合には出ていない。「あいつ頑張ってるな」とか「お、今のはいいプレーだぞ」のような、あたかもフラりと観戦に来たOBのような目線で試合を見つめてしまう。監督に一人、また一人と呼ばれ代打やら守備やら代走やら忙しそうに出かけていく。「よかったやん、がんばれよ!」と声をかける。完全にOBだ。なんならOBのジジイとまで言い切っても良い。でも良いタイプのジジイだから許して欲しい。悪いジジイはヤジを飛ばして昔話を始めるタイプのジジイだ。今は少しわるいジジイ(ひらがなで「わるい」と書くとロケット団のようだ)になりかけてはいる気もする。

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 若い学生に声援を飛ばしていた。普段あまり試合に出ることがない彼らは、意外にも少ないチャンスをものにして躍動していた。うん、たまにはこういう良いことがないとな。やってられないよな。うん。

 そう思っていると9回の裏が終わった。はっきり言って、立ちっぱなしな分ビデオ係より疲れる。ただ、いつも出ていないメンバーが頑張っていて、私の心の中には何か満足したものがあった。

 そして冒頭のセリフである。無慈悲な「今日はみんな試合出たからね!」だ。

 私は「?」と思い「みんな」の定義の確認に勤しんだ。周りも何人か私の方を見て、直ぐ目を逸らした。なんだよ、私が悪いのかよ。あ~ん?

 「みんな」の定義確認は5秒もあれば十分に終わってしまう。一瞬監督に、「あの、わたし、出てない……」とか細い声で田中正造よろしく直訴しようかと思ったが、世の中が乱れるだけだと思い断念した。見えないファインプレーである。解説の宮本さんとかに絶賛してもらいタイプのファインプレー。「今のプレーはですね、実は非常に高度なトリックプレーなんですよ。一見『みんな』に反応して意義を唱えるのが正しい気がしますが、身の程をわきまえるとそうはなりません。そこが普通の選手との違いです。いやこれは良いプレーを見ました……」。別に見せたくてお見せしているワケではないのだが。

 この場合正解はなんだったのだろうか。結局周囲の憐れむような視線を全く気付かないフリをしつつ、いつも通りダルそうに練習に励むという茨の道を堂々行進することを選んだ。一つの正解ではあるかもしれないが、多大なストレスを抱え込む結果となったことは否めない。その日は夜中の12時頃に再びグラウンドに来て、奇声を上げながらバッティング練習をしていたのを覚えている。だから多分正解じゃない。5年以上経過しているのにこんな文章を書いている時点で正解じゃないのは明白だ。ブブー、0点。

 なお、書いているうちにダイヤル錠の回しの魅力を伝えたい気持ちが膨らんでしまったのは秘密だ。一見単純そうで、その実死ぬほど単純である作業の魅力に迫る。近づくと火傷する、というより気が狂うかもしれないが。

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